開業手続きと最終チェック
マネープランを中心に開業について話を進めてきましたが、その他にも押さえておくべきポイントがあるので、簡単にあげておきましょう。
① 資格を取るのを忘れずに
バーを開業するためには、以下の資格や申請が必要となります。
- 食品衛生責任者
- 防火管理者
- 営業許可申請
- 消防所への申請
- 深夜営業の申請
- 税務署への申請
食品を扱うお店には「飲食店」の営業許可が必要です。これは、最寄りの保健所に申請すればよいのですが、その申請のためには食品を取り扱う責任者の資格を要します。
食品衛生責任者
資格取得者は1店舗に一人いればよいので、必ずしも自分が資格を持っている必要はありません。ただ、「食品衛生責任者」の資格は保健所で開催する講習を1日受講すれば取得できるので、この資格は必ず取得しておきましょう。
防火管理者
こちらの資格もお店に一人保有者がいれば大丈夫な資格となります。
消防庁の実施している2日間の講習会を受ければ取得でき、テナントの規模により乙種、甲種管理者が必要となります。
かかる費用ですが、例えば東京都の場合、テキスト代が4600円となり、こちらは当日購入できます。詳細などは各自治体の消防庁のHP確認して下さい。
営業許可申請
物件が決定した際、図面を持って最寄の保健所に相談をしましょう。営業するためにはいくつか決められた事項があり、それに沿って工事を進めていく必要があります。
打ち合わせで施設の検査日が決めますが、不合格で再検査となる場合もあります。そのため申請手続きは営業開始の最低10日前までに、できるだけ早めに行なうとよいでしょう。
合格後は営業許可書を受領しに再び保健所に行きます。許可申請手数料は業態、地区などによって変わるため、各自治体の保健所で確認しましょう。
消防所への申請
以前はそれほど厳しく無かったという話もありますが、現在この消防関連の申請も大変厳しくなっているため、保健所同様事前に図面を持って最寄の消防署の予防課に相談するとよいでしょう。
建物のテナントとして入り工事する場合、消防に届出が必要となります。
業者に頼む場合は、業者の方の仕事となりますが、ヌケモレがないか気をつけておきましょう。
事前の申請としては、消防設備の設置申請が必要となります。工事整備対象設備等着工届出書や地域によっては、工事そのものを届け出る必要がある場合もありますので、各自治体で確認しましょう。
居抜き物件の場合には、消防検査がすんなりと通る場合もあります。
深夜営業の申請
バーなどのアルコール主体のお店の場合、深夜0時以降の営業には警察署への届出が必要となります。カフェや食事主体の営業なら申請しなくても良い場合もあるため、一度相談に行くとよいでしょう。カフェバーの場合には、どのようなコンセプトにするかにもよりますが、カフェと食事が主体との主張が通れば申請の必要が無い場合もあります。
申請自体は無料ですが申請に必要な図面類を行政書士に依頼する必要があるため、その場合には費用がかかります。(10~30万円が相場)
申請に必要な書類
- 深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書
- 営業の方法届出書
- 営業所の平面図、求積図
- 照明、音響設備図
(図面類はテナントのオーナーや居抜物件の場合前のオーナーが持っている場合もあるため不動産に確認してみるとよいでしょう) - 住民票(外国人の方は外国人登録証明書)
- 物件契約書のコピー
- 営業許可書のコピー
ちなみに、店舗基準としては下記のようなものがあります。
- 客室の床面積が9.5m2以上であること。(客室が1室の場合は制限ナシ)
- 客室に見通しを妨げる設備が無いこと。
- 風俗を害する恐れのある装飾、写真等の設備が無いこと。
- 騒音、振動の数値が条例により定められた数値以下であること。
- ダンスをする踊り場がないこと。
- 営業所の照度が20ルクス以上あること・・・など
税務署への申請
開業してから一ヶ月以内に個人事業の開廃業等届出書を提出する必要があります。確定申告の種類は白色、青色などありますが、税金関係が苦手な人は税理士さんに依頼するとよいでしょう。
確定申告は慣れない方は相当な労力と時間が必要となるため、多少お金がかかっても、それよりもお店の経営に力を注いだほうが良いという考え方もあります。
もし自身で行なう場合には、青色申告会に入会するという方法もあります。いろいろ教えてくれるので1人で手探りで行なうよりもおすすめです。
また、人を雇用する場合(アルバイトなど)給与支払事務所等の開設届出書の提出も必要となります。
各種資格や申請は、申し込みから交付まで時間がかかるものもありますので、余裕を持って受講・申請計画を立ててください。オープンの1か月前までには取得できるようにしておきましょう。
② ショップカードやメニューの作成
細かな話になりますが、オープン直前では間に合いません。わかりやすさや、デザインをよく考えて何をどのくらい作るのかの計画を立てましょう。
デザインや印刷などは専門の業者に発注するのが一番安心ではありますが、ある程度のものであるならパソコンなどを使えば自分で作ることもできます。初期費用を少しでも抑えようと思うなら、時間と手間はかかりますが自分で作ってもよいでしょう。
③ 広告宣伝
②とも関わってきますが、オープンの際にはまず多くの人に知ってもらう必要があります。そのための広告宣伝手段を考えましょう。
チラシを作る
一番オーソドックスな宣伝手段です。最もお店に近しい地域に住んでいる人に、お店のことを知ってもらうきっかけとなります。
チラシに載せる情報を決め、オープン特典などについてもしっかり計画を立ててチラシを作りましょう。チラシをまく地域をどの程度にするのかは、業者と相談するとよいでしょう。チラシだけポスティングする方法と、新聞に入れてもらう方法とがあります。地域によってもその料金は変わりますので、これも見積をとって業者を検討します。
なお、チラシの枚数は「千・万」という単位になるので、印刷などは業者に頼むのがよいでしょう。紙質や使用するカラーなどによっても、チラシの価格は変わってきますが、最初の挨拶状となるものでもありますから、ある程度しっかりしたものを作りましょう。
タウン情報誌やフリーペーパーに掲載する
タウン情報誌やフリーペーパーなどに掲載すると、地域に住んでいる方の目に触れやすくなり、配布もお任せできるので一つの宣伝手段として有効です。
有名な情報誌では広告費がかかる場合もありますが、地域密着のものなら広告費も定額の場合が多いでしょう。一度問い合わせして確認してみましょう。
インターネットで集客する
最近はインターネットによる集客も重要になってきています。
利用できるweb媒体やツール
- ホームページの作成
- ブログの作成
- Google map
- 地域のポータルサイト
- face book・Line・twitterなどのSNSページの作成・・・など
ホームページの作成はもはや必須となりました。それと合わせて、Google mapや地域のポータルサイトなどへの登録、face bookやLine、twitterなどのSNSページの作成も考えるとよいでしょう。
開店してからでも遅くはありませんが、インターネットによる口コミの力は侮れません。できれば開店前にUPし、オープンの予定を広めておくことが望ましいといえます。
ページの作成には専門の業者に発注することもできますが、SNSやブログなどの簡単なものであれば、自分でも比較的簡単に設定ができます。最初にSNSやブログから始め、そのあとにホームページのことを考えるという予定で取り組んでもいいでしょう。
④ オリジナルグッズや販促商品
お店の個性を出しリピーターを増やすためには、スタッフのユニフォームや、販促用の小物などを作ることも効果的です。
センスのよい店名ロゴのコースターや、オリジナルのカクテルグラスでもよいでしょう。オープンの記念に先着のお客様に配布するなどもおすすめです。
⑤ プレオープンの重要性
「ぶっつけ本番」という言葉はありますが、何事も十分な準備は必要です。飲食店経営や運営経験がない場合には、必ずプレオープンを行い実地で経験・体感することが重要です。
お客様には、「初心者マーク」などは通用しません。オープンしたばかりの頃はただでさえ手際が悪く、お客様にも多少のストレスを与える可能性も高くなります。寛容なお客様ばかりとは限らないので、お店の良くない評判をSNSなどにアップするなどの事態が起こる可能性があります。これは、お店にとっては大きなリスクとなります。
そのため、オープンの2~3日前に、親しい人やご近所の方をお招きしてプレオープンを行い、調理と接客を実際の店で経験・体感しましょう。
シュミレーションと現実のギャップをオープンまでに修正する
頭の中でシミュレーションしていたことと、現実とのギャップがどの程度なのか、修正するべきところはどこか等々、たくさんの気付きがあるはずです。それをスタッフ全員で共有し、グランドオープンまでにすべてを良い状態に整えます。
逆の言い方をすると、無料もしくはある程度大きめの割引で提供するプレオープンでなら、まだ失敗は許されます。たくさんの失敗があるかもしれませんが、落ち込んでいる暇はありません。むしろ、「オープンしてからの失敗でなくてよかった」とポジティブに考えて、オープンに向けて全力で準備を進めましょう。
⑥ スタッフを雇う場合の保障と福利厚生
一人で全てを運営するなら話は別ですが、人を雇う場合には考えなければならないことがいくつかあります。特に「保障」は大切です。労働環境を整備するのはオーナーの役目です。
- 雇用保険:ハローワークへ
- 労災保険:労働基準監督署へ
- 健康保険と厚生保険:社会保険事務所
経済的な負担は大きくなりますが、良い人材はより良い雇用条件を探します。せっかく育てた人材が辞めてしまっては、長い目で見ると損失となりますし、お店の評価にも関わります。アルバイトを大勢雇う大きな店ならともかく、小さなお店のスタッフのことはお客様も覚えているものです。いつも行くたびにスタッフが変わるようなお店では信用にも関わるでしょう。
オーナーとしての手続きはほとんど人が初めてで不明点も多いですが、各機関の指示に従って進めていけば大丈夫です。時間的なゆとりを持って取り組むようにすれば、焦る必要もありません。
お店が軌道に乗ってきたら、保障だけではなく福利厚生についても考えましょう。スタッフに気持ちよく働いてもらえば、お店の雰囲気も明るく活気が出てきます。そのためにも、こうした労働条件や環境に配慮していくことを忘れないでください。
⑦ 万一のときのために
火事、盗難、事故といった不測の事態は、「いつでも起こりうるもの」という認識が必要です。そうしたことに対処するためにも、オープン前には保険に加入も考慮しましょう。保険会社や商品によっても異なってきますが、年間5万円程度を目安にして考えるのが一般的です。
- 店舗総合保険:店舗などの建物と、建物内の動産、について、広く保障をする。
- 賠償責任保険:店舗内で発生したお客様のケガなどに対応。
- 店舗休業保険:偶然な事故により営業ができない場合などのときに、その損害を補償。
また、店舗の場所や状況によっては、警備会社に夜間や休業時の警備をしてもらうのも検討しましょう。緊急の場合には、駆けつけてくれるので安心です。
さらに、火災や地震などの災害発生時に、お客様をどのように誘導するのかなどの防災計画についても考えておくべきです。お店から安全な場所に誘導するための経路はもちろんのこと、緊急の傷病者が発生した場合などの対応について、あらかじめ決めておき、スタッフ全員で共有しておくことも大切です。
夢のお店のオープンは、ゴールではなくスタート
全ての準備が整ったら、いよいよ新しい挑戦が始まります。楽しいことも、嬉しい事も、苦労も困難も、その全てがあなたの人生を豊かにする出来事となるでしょう。
あなたが選んだお酒やこだわりのカクテル、手作りのフードを楽しみにして来てくれる人たちのために、笑顔が溢れる時間を提供できる、あなただけの空間をつくっていきましょう。


